気候変動への対応(TCFD)
りそなホールディングスは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の趣旨に賛同し、推奨されたフレームワークの整備と気候関連の財務情報開示に適切に対応していきます。
ガバナンス
気候変動への対応状況は、取締役会に年1回以上定期的に報告を行い、適切な監督が図られる体制を整えています。
社外取締役が過半数を占める取締役会では、多角的な視点から議論が行われ、その結果はグループの経営戦略やリスク管理に反映されています。
より具体的な気候関連の「リスクと機会」の識別・評価・管理に関する重要事項は、りそなホールディングスの社長を委員長とし、子会社である銀行の社長をはじめ、経営管理部署、リスク管理部署、法人・個人の営業部門などの担当役員、関西みらいフィナンシャルグループのサステナビリティ推進部門長などが出席する※1「グループサステナビリティ推進委員会」において一元的に管理しています。
同委員会は四半期ごとに開催され、気候変動に伴う機会とリスクの識別・評価、リスクを低減し機会を伸ばすための方策・目標などについて議論を行い、その結果をグループの経営戦略やリスク管理に反映しています。
- ※12021年度よりKMFGの社長、経営管理部署の担当役員、りそなアセットマネジメントの社長をメンバーに追加

社会的責任投融資に係るガバナンス
融資業務
グループの信用リスク管理における基本原則である「グループ・クレジット・ポリシー」を、取締役会が決定しています。同ポリシーには、社会的責任や環境への配慮を踏まえた考え方が定められており、大型プロジェクトなどが環境に及ぼす影響やお客さまの環境に配慮した取り組みを適切に把握・評価するための体制・手続を整備しています。
投資
りそなアセットマネジメントが行う信託財産運用について、議決権行使を含む責任投資の活動状況を取締役会に適宜報告し、一層の取り組み改善がトップダウンで推進される体制を構築しています。
また、議決権行使を含むスチュワードシップ活動が適切に行われていることを社外第三者の視点で検証する会議として、りそなホールディングスの社外取締役を議長とする「責任投資検証会議」を設置しています。
経営戦略
気候変動がビジネスに及ぼす機会とリスク
不確実性の高い気候変動の影響を捉えるため、「2℃」と「4℃」の2つのシナリオを用いて機会とリスクを定性的に評価しています。
評価に際しては、「短期」「中期」「長期」の時間軸を設定しています。
影響を受ける時期については、「短期:5年程度」「中期:15年程度」「⻑期:35年程度」の時間軸を設定しています。
【参考としたシナリオ】
IEA ETP 2DS・IPCC RCP8.5・日本の約束草案 等
2℃シナリオ

4℃シナリオ

●炭素関連資産の状況 (2021年3月末時点)
TCFD提言の定義を踏まえたエネルギーセクターおよびユーティリティーセクター向けの貸出が、ポートフォリオ全体に占める割合 ※2 |
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- ※2貸出金、支払承諾、外国為替等の合計 (りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行の合算)
気候変動シナリオ分析(定性)の深掘り
当グループの炭素関連資産がポートフォリオ全体に占める割合は大きくないと考えられるものの、気候変動リスクは幅広い業種に影響を及ぼす可能性があり、業種ごとに影響の内容や時期も異なると認識しています。
この状況を踏まえ、気候変動の影響を受けやすいとされる業種※3の潜在的な影響度と、当グループのポートフォリオに占める割合を踏まえた「重要セクター」を選定し、当該セクターに対する定性シナリオ分析の深掘りを実施しました。
重要セクターの選定プロセス
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「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」「国連UNEP-FI」「SASB」などの情報を参考に、気候変動の影響を受けやすいとされる業種※3を対象とした気候変動影響度を調査 |
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各業種が当グループのポートフォリオに占める大きさを追加 |
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1、2の結果を踏まえ、重要セクターを特定 |
セクター | 気候変動影響 | ポートフォリオの大きさ※4 | 選定結果 |
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不動産・建設 | 中 | 大 | 重要セクターに選定 |
自動車・運輸 | 大 | 中 | 重要セクターに選定 |
エネルギー | 大 | 小 | 重要セクターに選定 |
素材 | 大 | 小 | 非選定※5 |
農業・食料 | 中 | 小 | 非選定 |
紙パルプ・林業製品 | 大 | 小 | 非選定 |
銀行・生損保 | 中 | 小 | 非選定 |
重要セクターごとのシナリオ策定、気候変動リスク推移の定性評価
選定した重要セクターごとにシナリオを策定し、気候変動影響が発現する時期と大きさについて、定性的な評価を実施しました。評価結果は今後、気候変動が当グループに及ぼす財務影響の定量分析に活用していく予定です。
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「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」「 国 連UNEP-FI」「SASB」などの情報を参考に、各セクターにおけるリスクと機会に影響が大きいと考えられる重要要素を調査、選定 |
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選定した重要要素について、IEAなどの客観性の高い科学的パラメータから影響の発現時期、インパクトの大きさを想定。5フォース分析※6に組み入れ、将来の社会像とセクターへの影響を想定 |
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一定のシナリオを仮定し、各セクターの気候変動リスク推移を評価 |
各セクターにおけるリスクと機会の重要要素
不動産・建設 | 自動車・運輸 | エネルギー | |
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政策 | 炭素税の導入・引上 | 炭素税の導入・引上 | 炭素税の導入・引上 |
法律 | 建築物環境性能の強化 | GHG排出規制の強化 | GHG排出規制の強化 |
市場 | 環境性能の高い建物への顧客ニーズのシフト | エネルギー価格の上昇 | 再生可能エネルギーの普及 |
評判 | ― | ― | 顧客の環境配慮意識の向上 |
技術 | ― | 電気自動車への転換 | ― |
急性 | 水害などの被害増加 | 激甚災害による操業影響 | 防災対応強化費用、物損被害の発生 |
慢性 | ― | (運輸)線路の熱膨張被害、冷房費の上昇 | ― |
将来の社会像とセクターへの影響
(不動産建設)
将来の社会像 | セクターへの影響 | |
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2℃ | カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、建築物の低炭素建材・再エネ導入が普及 | 環境負荷の低減を意識した施設の建設が加速 |
4℃ | 物理的リスクが高まり、防災性能の高い建築物の需要が高まる | 水害などに備えた防災性能の高い施設の建築が進む一方、異常気象による損害・防災コストは増加 |
(自動車運輸)
将来の社会像 | セクターへの影響 | |
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2℃ | カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、再エネやEV車が普及、輸送ではモーダルシフトが加速 | カーボンニュートラルに向けて、環境配慮型車両・鉄道車両の拡大、モーダルシフトが加速 |
4℃ | 低炭素化は成り行き水準にとどまり、物理的リスクが高まる | 従来の市場環境が維持される一方、異常気象による損害・防災コストは増加 |
(エネルギー)
将来の社会像 | セクターへの影響 | |
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2℃ | カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、再エネの導入・利用が普及 | カーボンニュートラルに向けて、再エネの導入拡大が加速 |
4℃ | 依然として化石燃料に依存し、物理的リスクが高まる | 化石燃料の需要は堅調に増加する一方、異常気象による損害・防災コストは増加 |
気候変動リスクの推移

重要セクター | 移行リスク:2℃シナリオ | 物理的リスク:4℃シナリオ |
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不動産・建設 | 2040年にエネルギー原単位の低下を受けたコスト増と、ZEB需要増加による収益増が相殺すると想定し、低リスクで推移 | 2030年に洪水被害額が約2割増加すると想定し、以降高リスクで推移 |
自動車・運輸 | 2030年に炭素税、法規制によるエンジン搭載車(ICE)の大幅需要減を想定し中リスク、2030年代に国内でICEの新規販売規制を想定し、PHV/ZEV※7需要がカバーしなかった場合は2035年以降高リスクで推移 | 2030年に洪水被害額が約2割増加することを想定し、以降中リスクで推移 |
エネルギー | 2030年に炭素税、炭素排出削減目標、エネルギーミックスにおける化石燃料の削減を想定し、以降高リスクで推移 | 2030年に洪水被害額が約2割増加することを想定し高リスク、2040年に原油価格が約3割上昇することを想定し、収益増加により中リスクに転換 |
- ※3当社の業種区分では、「エネルギー」「自動車・運輸」「素材」「紙パルプ・林業製品」「農業・食糧」「不動産・建設」「銀行・生損保」
- ※4「大」:5兆円超、「中」:1兆円~5兆円、「小」:1兆円未満と区分
- ※5素材の種類により、リスク特性が異なりポートフォリオがさらに分散されることから選定せず
- ※6「売り手」「買い手」「新規参入者」「代替品」が「業界」に及ぼす影響を分析する手法。すべてに影響するもう1つの要素として「政策」を加味
- ※7PHV:プラグインハイブリッド車。外部から電源をつないで充電できるハイブリッド車 ZEV:ゼロ・エミッション・ビーグル。排気ガスを出さない電気自動車や燃料電池車
経営戦略と取り組み
気候変動による財務影響は、最⼤の資産である貸出⾦に表れる可能性が⾼く、お客さまの機会とリスクが、貸出⾦を通じて当社グループの機会とリスクにつながっていると認識しています。
りそなグループの貸出⾦は、⼤部分が個人と中⼩企業のお客さま向けで構成されています。リスクが分散されている⼀⽅、中小企業のお客さまは、大企業に比べ気候変動などの社会課題が事業に及ぼすリスクを知る機会が少ない、対応を考える余裕がないといった課題を抱えている傾向があります。
りそなグループでは、個人と中小企業のお客さまに、まずは「気候変動を含む社会課題を広く知っていただくこと」、次に「社会課題の解決にご参画いただくこと」、そして「お客さまご自身の課題の発見、将来のこまりごと解消をサポートしていくこと」、これらすべてのステップに対応するサービスをご提供しています。
今後は新たに策定した「リテール・トランジション・ファイナンス目標」のもと、「お客さまご自身の課題の発見、将来のこまりごと解決をサポート」するステージでの「対話の深化」と「ソリューション強化」をより一層進めるとともに、長期的・戦略的な経営資源の配分を実施していきます。
第1ステージ
気候変動を含む社会課題を広く知っていただくための取り組み
【はじめようSDGs!】
なぜ環境・社会課題が重要なのか、お客さまにSDGsの概要やりそなグループの取り組みをわかりやすくお伝えするための冊子を営業店に設置し、お客さまに配布しています。

【企業にも影響が大きいSDGs】
中堅・中小企業のお客さまと、SDGsに代表される環境・社会課題が企業に与える影響、サプライチェーンからの排除リスクなどについて対話するツールとして、法人営業活動に活用しています。

第2ステージ
社会課題の解決にご参画いただくための取り組み
【みらいE-usプロジェクト「みらいEarth」】
世界のクリーンテック関連企業株式・グリーンボンドを対象とした投資信託商品です。りそなの収益の一部が「りそな未来財団」「みなと銀行育英会」への寄付を通じて、次世代を担う子どもたちへの奨学金などに充てられています。

【SDGs推進私募債】
環境・社会課題の解決にご賛同いただいた法人のお客さまが、私募債を発行される際に、銀行が受け取る手数料の一部を活用して、りそながSDGs関連団体に寄付を行う商品です。

第3ステージ
お客さまご自身の課題発見・こまりごと解消をサポートするための取り組み
【サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)】
SLLは、環境・社会・経済に対するお客さまの事業活動による影響を考慮した「サステナビリティ戦略」と整合した目標を定め、その達成状況に応じて金利などの融資条件が連動する融資商品です。
当グループでは2021年3月に初めてSLLによる融資を実行しました。

【SDGsコンサルファンド】
りそな総合研究所による簡易コンサルティングを無料でご提供する融資商品です。お客さまのニーズに合わせ、社内浸透、事業マッピング、サプライチェーンリスク対応支援などのコンサルティングメニューをご用意しています。

日銀による「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」に対応した投融資
りそなグループは、日本銀行の「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」に対応した投融資を提供しています。
国内の気候変動対応に資する投融資と判断するにあたっての基準および適合性の判断のための具体的な手続きについては下記をご覧ください。
気候変動対応オペにかかる対象投融資に関する基準および適合性の判断のための具体的な手続きの開示
リスク管理
りそなグループでは、気候変動に伴うリスクを、信用リスク、オペレーショナルリスク、レピュテーショナルリスクなど、当社が定めるリスクカテゴリーごとに、「グループサステナビリティ推進委員会」にて毎年定期的に識別・評価し、四半期ごとにその管理を行っています。
各リスクカテゴリーにおいては、気候変動に伴うリスクを「将来の不確実性を高める要素」と捉え、既存のリスク管理プロセスへの反映を開始しています。
また、りそなとお客さま、ひいては、社会全体のリスク低減に向け、「社会的責任投融資にかかる取り組み」などにより、金融の役割を通じてカーボンニュートラル社会を実現していくための管理を強化しています。
指標・目標
お客さまとともに、気候変動に伴うリスクを低減し、機会を伸ばす
より多くのお客さまに気候変動対応の重要性を知っていただき、お取り組みを支援していくための指標・目標を、「サステナビリティ長期目標」(リテール・トランジション・ファイナンス目標)、「2030年SDGs達成に向けたコミットメント」のアクションプランとして設定しており、これらの進捗を毎年度評価するPDCAの枠組みを整備しています。
2021年度のアクションプラン(環境関連)
- お客さまのSDGs/ESG対応状況に応じた建設的な対話の促進
- 環境価値の高い建物の普及拡大支援
- 地域社会における再生可能エネルギーの普及促進
- キャッシュレス化とデジタル化の拡大、提供商品やサービスのペーパーレス化
- 自然環境・生物多様性保全に向けた地域活動への参加など
当グループが排出するCO2排出量の削減目標
日本全体で2050年カーボンニュートラル達成が必要であることを踏まえ、2021年6月に策定した「サステナビリティ長期目標」において、当グループのエネルギー使用に伴うCO2排出量に関する新たな削減目標を設定しました(カーボンニュートラル目標)。
これまでの削減実績推移については、「オフィスにおける環境負荷低減」をご参照下さい。

2021年度のアクションプラン(環境関連)
- 電力使用量の削減に向けた社内啓発活動
- 主要施設などへの再生可能エネルギーの導入
- 営業車両の台数削減、EV車両の順次拡大
- サプライヤーに対する環境配慮の要請および啓発活動