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CEOメッセージ

パーパス起点の経営

取締役兼代表執行役社長兼グループCEO
南 昌宏
取締役兼代表執行役社長兼グループCEO
南 昌宏

2023年、りそなグループは、名実ともに、リテールNo.1を目指す新たなステージへと踏み出しました。そして、同時に、新たな挑戦を根底から支えるグループの理念体系についても再整理しています。

これは、りそなグループが、次なるステージに向かうための前提であり、我々の存在意義や拠って立つものを、いま一度、グループ全体で見つめ直し、再確認するためのプロセスでもあります。

昨年、制定したパーパス(「金融+で、未来をプラスに。」)は、「我々が社会にどのように貢献していくのか。」という、りそなグループの根底に流れる想いを改めて明確化したものです。そして、これまで大切にしてきた経営理念は、「りそなショック」からの学びをグループのDNAとして伝えていくために、一言一句変えることなく次世代に引き継いでいきます。「パーパス」と変わることのない「経営理念」、そして、「リテールNo. 1」を掲げる「長期ビジョン」が、我々が、迷ったときに立ち返り、そして再び前に進んでいくための原点となるものです。

事業環境が変わり、価値観が多様化していくなかで、個の集合体である組織も、これまでとは異なるマネジメントを追求する必要があると考えています。

パーパスは、企業内バリューチェーンの最初の起点であって、その実現が、最終目標でもありますが、その実現に向けた道のりは、決して平坦なものではありません。

まずは、一人ひとりがパーパスを深く理解することが出発点であり、「グループのパーパス」と「自分自身のパーパス」が共鳴する状態を作り出しながら、自分たちは「このために仕事をしている」という高いモチベーションの獲得につなげていきます。そして、3万人の全役職員が、自ら考え、気づき、行動するという企業文化が、変化のスピードが速く、お客さまのニーズが多様化・高度化・複雑化していく時代において、大きな武器になるものと考えています。

パーパスは、決して「飾り」ではありません。実現することができなければ、よくできた願望に過ぎません。私自身も、パーパスへの信頼性とその意義を信じ、企業内バリューチェーンを適切に変化させながら、組織全体の変革をドライブしていきます。

これからも、役職員一人ひとりが、「誰のどんな未来をプラスにするのか」を起点に考え続けるとともに、お客さまのこまりごと、社会課題の解決に全力を尽くす金融グループでありたいと考えています。

ただ、その解決の手法は、従来の金融サービスの枠にとどまるものではありません。

誰かの未来を少しでも豊かなものにするためのソリューションは、無限に広がっています。だからこそ、これまでの常識や価値観にとらわれることなく、一人ひとりが最高のソリューションとは何かを深く考え続けることが重要です。

こうしたプロセスを通じた3万人の成長が、りそなグループの新たな競争力の源泉となっていくものと信じています。

りそなグループが長期的に目指す姿とオールりそなの発揮

ここで改めて、我々が長期的に目指す姿をお伝えしたいと思います。我々は、お客さまのこまりごと、社会課題を起点にビジネスを考え抜き、グループが潜在的に持つ強みに、イノベーションを掛け合わせていくことで、お客さま価値の創造とその最大化を目指しています。そして、その先に、「金融+で、未来をプラスに。」という「パーパス」の実現、長期ビジョンとして掲げる「リテールNo. 1」の実現があるものと考えています。

現在、脱炭素やDXといったメガトレンドがもたらす長期的な構造変化と、数十年に1度といわれる様々なイベントが交錯する歴史的な転換期を迎えています。また、国内でも、デフレから緩やかなインフレに向けた流れが動き出すなかで、お客さまのこまりごとや地域社会のニーズにも様々な変化が生じています。

こうした事業環境変化のなかで、お客さまに新たな価値を提供していくためには、これまでの発想や枠組みにとらわれることなく、我々自身がいち早く変化に適応していくことが重要です。だからこそ、りそなグループの現中計は、CX(コーポレートトランスフォーメーション)を掲げています。変化は、必ず新しい機会とリスクを連れてきます。グループが持つ強みを活かし、イノベーションを起こしながら、それをいかにチャンスに変えられるかが勝負の分かれ目です。

そのために、「オールりそな」、すなわち、特色ある4つの商業銀行、全グループ会社、そして、戦略的につながる外部の力の結集が不可欠です。りそなグループは、長い歴史のなかで培ってきた、1,600万人、50万社の厚いお客さま基盤、信託・不動産など競争力のある機能・商品やサービス、多彩な情報など高い潜在能力を有しています。ただ、残念ながら、この力をまだ十分に活かしきれておらず、ここに大きな可能性が眠っているものと考えています。より多くのお客さまに最高のソリューションを提供するため、これまでの発想を変えて、オールりそなでのつながりを一気に加速させていきます。

企業価値向上に向けて

ここ数年の当社株価は、金融政策の正常化に向けた期待も高まるなか、緩やかな上昇基調をたどってきました。一方、PBR(株価純資産倍率)は、2024年3月末時点で0.84倍まで上昇したものの、長期間にわたって1倍を下回る状況が継続していることに、忸怩(じくじ)たる思いもあります。

ここからは、企業価値向上に向けた財務・非財務からのアプローチに関する話を進めていきます。具体的には、「ROEの向上」「資本コストの低減」、双方への取り組みが、市場評価としてのPBR向上につながるものと考えています。

まず、ROEの向上ですが、資金利益とフィー収益の双発でROAを反転向上させるとともに、プロセス改革の加速を通じ、グループのコスト構造そのものを変えることが基本線です。また、資本の本格活用フェーズにおいて、オーガニック・インオーガニック両面からの成長投資を継続していきます。さらに、資本の好循環を定着させることで、ROEの持続的な成長を目指していきます。現中計最終年度の株主資本ROEの目標は8%としています。昨年度の実績は7.2%、今年度は7.3%の期初目標としていますが、政策金利のさらなる引き上げも想定すれば、8%を通過点として、本格的な上昇余地も視野に入るものと考えています。

また、資本コスト低減の観点では、不確実性が高まる時代にあって、リスクを適切にマネージしつつ、市場の皆さまの期待に応えられる、質の高い、安定的な収益構造を構築していくことが重要です。ESGにかかる取組強化と併せて、当グループの持続可能性を幅広くご理解いただけるよう、財務・非財務双方の開示拡充についても、積極的に取り組んでいきます。

脱デフレ環境における双発ビジネスの展開

ここから具体的な取り組みについて、説明していきます。2024年3月、いよいよ金融政策の正常化に向けてマイナス金利が解除されました。これは、金利感応度の高いバランスシートを持つ当グループにとって追い風です。もちろん、こうした変化は競合他社にも等しく訪れています。変化を、りそなグループの持続的な成長に向けた千載一遇のチャンスに変えられるかどうかは、我々の今後の対応力にかかっています。

まずは、デフレやマイナス金利下で染みついたこれまでの発想や行動パターンを見直すこと、そして、①世の中の変化、②お客さまのニーズの変化、③競合他社の変化を、鋭く嗅ぎ取ることが出発点となります。お客さまのニーズを踏まえた円滑な資金提供、高度なコンサルティングの提供はもとより、これまでのビジネスを支えてきた業務プロセスやシステムなどの次世代化を急ぐ必要があると考えています。

強固なリテール基盤の強みやコンサルティングを起点とする預貸金ビジネスの再興、有価証券ポートフォリオの復活、そして、リアルとデジタルの融合など磨きをかけてきたフィービジネスのさらなる強化を通じて、トップラインのさらなる拡大を目指します。前期は、預貸金利益、円債利息、フィー収益が年度後半にかけて反転、あるいは増益幅の拡大が既に鮮明となっています。今期も、その良い流れを力強く継続していきたいと考えています。

前中計期間のROEは、最終年度に持ち直したものの、特に、コロナ禍の前半において、大幅な悪化を余儀なくされました。その主因は、バランスシートが大幅に拡大するなかで、低稼働資産が増加したことにあります。現中計期間において、金融政策の正常化が進むなかで、より能動的な円金利リスクテイクを通じて、ROAの向上を目指しますが、既に前年の資産サイドの動きとして、日銀預け金から良質な貸出金、中期ゾーンを含めた有価証券へのシフトが始まっています。

今後、金利のある世界において、バランスシートの負債サイド、粘着性の高い安定的なリテール預金の強みがより一層活きてくるものと考えています。運用サイドを含めたバランスシートマネジメントの高度化がまさに重要なテーマとなっていきます。

双発ビジネスのもう一つの柱であるフィービジネスについては、4期連続での過去最高益の更新を目指します。その一つとして、緩やかなインフレを前提に、貯蓄から資産運用への流れを踏まえたAUMビジネスの拡充は中長期的テーマです。「資産運用立国」の看板がかかり、新NISAなど制度面の整備が進み、国民の皆さま方の意識にも少しずつ変化が起きるなかで、長期資産運用に向けて大きな転機が訪れているものと考えています。りそなグループは60年を超える企業年金で培ったプロ向けの運用を、より多くのリテールのお客さまに、提供させていただくとともに、長期・積立・分散をキーワードに、リアルとデジタルの融合を通じたりそなグループらしいビジネス展開を目指していきます。

フィービジネス拡大のイメージ図を示していますが、これまでのコンサルティング型のフィー収益に加え、リアルとデジタルを融合させたリカーリング型のフィー収益についても着実な成長が確認されています。具体例として、ファンドラップ収益は6年間で4.5倍となり、既に100億円ビジネスを視野に入れています。デビットカード収益も、6年間で15億円から59億円と4倍に拡大し、今後も成長軌道をたどります。そして、2018年2月の取扱開始から急速に拡大・浸透しているグループアプリのダウンロード数も、1,000万に迫っており、今後のビジネス構造そのものを変えていくプラットフォームに成長しています。

基盤改革とコストコントロール

1,600万人、50万社+αのすべてのお客さまと100%デジタルでつながりながら、深いコンサルティングをベースとする特別なリアルの瞬間を提供していくことが次世代リテール金融にとって不可欠な流れです。個人・法人分野ともに、日常の金融は、中長期的にデジタルとデータに急速にシフトしていきます。

一方で、金融が持つ高度な課題解決力を必要とするニーズは、必ず存在し続けます。ここは対面を中心とする深いソリューションの提供が不可欠な領域であり、最後の差別化の柱でもあります。つまり、次世代において、我々が最高のソリューションを提供し、お客さまに満足を超える感動を提供していくためには、人財とテクロノジーの融合が不可欠だということです。そのために、ITや人的資本への先行投資は不可欠な要素です。

まず、IT投資については、非対面チャネルやデジタル決済のさらなる拡充など、お客さまへの価値提供と同時に、社内の業務プロセス改革などを通じた大幅な生産性向上を目指します。デジタル・データ武装の遅れは、いずれ成長の大きな制約となります。現中計に掲げる「構造改革」の加速を通じて、りそなグループの持続的成長をより確かなものにしたいと考えています。

振り返ると、これまでも様々な改革を通じて、生産性の向上を図ってきました。前中計の3年間においても、店舗ネットワークの見直しや、りそな改革で培ったローコストオペレーションのノウハウを関西みらいフィナンシャルグループ(KMFG)に展開することにより、戦略領域への人員シフトを進めながら、グループの総人員数を3,400人減少させています。こうした取り組みを通じて捻出した経営体力を、人的資本に再投資することで、次世代に向けた好循環を生み出しています。一人当たり人件費は、前中計のスタート時点(2020年3月末)から現中計終了(2026年3月末)迄の6年間で17.6%増加しますが、一人当たりコア収益は、それを上回る42.6%の増加を計画しています。

業務プロセス改革、融資業務改革、住宅ローン事務改革や信託システムのオープン化を含めた様々なプロセス改革の効果は、いずれトップライン側、コスト側双方に大きな効果をもたらします。りそな改革で培われた「変革のDNA」は、今もりそなグループに脈々と受け継がれています。我々は、金融政策の正常化という追い風の中だからこそ、未来を見据えて新たな構造改革を目指します。

資本の本格活用

りそなグループは、2015年の公的資金完済後も、資本の質的・量的拡充を進めてきました。そして、完済から8年が経過し、ようやく資本の本格的な活用フェーズに入っています。今後についても、健全性の重視、オーガニック、インオーガニック両面での成長投資、そして株主の皆さまへの還元についてバランスある拡充を目指します。そして、グループ企業価値向上を目指す新たな資本循環構造を構築したいと考えています。

中計1年目である2024年3月期は、期間収益が計画を上回って推移するなか、オーガニック領域を中心に成長投資を加速させました。インオーガニック領域においても、リース2社の完全子会社化、デジタルガレージ社との資本業務提携の拡大をクロージングしています。なお、リース2社は、すでに本年4月に合併し、「りそなリース」として新たなスタートを切っています。

株主さまへの還元につきましても、1株あたり1円の増配に加えて、年間で250億円の自己株式取得を実施させていただきました。これは、前中計の3年分と同水準の自己株式取得額となっています。

また、政策保有株式の削減も、資本マネジメントにおける重要なテーマであり、本年5月、新たな削減計画を公表しました。新計画は6年間で、現行の簿価残高を3分の2以上削減する内容ですが、政策保有株式の削減をスタートさせた2003年3月と比較すると、2030年までに、簿価ベースで94%の削減となる計画です。これは変化の時代にあって、改めて、お客さまに新たな価値を提供するために、そして、りそなグループが持続的成長を目指すために必要となる資本の再配分を目指すものです。計画を進める過程で捻出される経営資源をリテール分野での成長投資に振り向けるとともに、そこから生成される収益のアップサイドを源泉に株主還元の拡大についても検討を進めていきます。

リテールのお客さまのSXに最も貢献する企業

りそなグループは、リテールのお客さまのSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に最も貢献する企業を目指し、これまでESGへの取り組みを強化してきました。大切なことは、SXに係る機会やリスクをお客さまのそれぞれの現在地から共に考えることであり、伴走型で具体的なサポートを継続していくことが「リテールNo. 1」を掲げる我々の使命だと考えています。そのためには、我々自身が外に開き、世の中に学び、いち早く変化に適応していくことが求められます。今後も、お客さまのSXを二人三脚でサポートすべく、E、S、G各々の領域で取り組みを加速させていきます。

また、サステナビリティ長期指標として、「お客さまにとっての価値」「環境価値」「社会価値」「従業員にとっての価値」といった様々な観点から、2030年度に目指す水準を掲げています。より具体的な取り組みはCSuOメッセージCHROメッセージでの説明に譲りますが、常にお客さま目線、そして中長期目線を持ちながら、それぞれの目標に向けて着実に前進していきたいと考えています。

おわりに

りそなグループは、昨年、20年の節目にあたり社史を発刊しました。りそなグループの源流は古く、100年を超える歴史を有する金融グループですが、今回の社史は、あえて、預金保険法に基づく公的資金の注入が決定された2003年5月17日を起点とし、その後の20年にわたる変革の歴史を中心に構成しています。

社史の冒頭に、『「これまでの感謝」と「強い覚悟」をもって、歴史を深く胸に刻むとともに、様々な学びをりそなグループのDNAとして正しく伝承し、さらなる成長に活かしていくことが、今を生きる全役職員の責務である』と、記しました。100年を超えるリテール特化の歴史のなかで培われたグループの強み、そして、再生の過程で培ってきた「変革のDNA」を、りそなグループを次のステージに押し上げていくための原動力としていきます。そして、これからも「お客さまの喜びがりそなの喜び」という基本姿勢を決してぶらすことなく、お客さま、地域社会とともにさらなる成長を目指します。

皆さま方におかれましては、引き続き、りそなグループのさらなる挑戦に、変わることのないご支援、ご指導をいただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。